小学校に上がる時に、家族で写真館へと行きました。真新しいランドセルを背負って、新品のワンピースを着て、私はかなり緊張していました。古い写真館で、見たこともないような大きなカメラや照明があり、幼い私には初めて訪れる写真館は、まるで見知らぬ場所に来たようで、不安がありました。
そして、父と母と一緒に並んでの撮影では緊張しながらも、なんとか笑顔を浮かべることができたのですが、一人での撮影となると、途端に緊張してしまい、笑顔にはなれませんでした。
「笑って」
と周囲に言われれば言われるほど、私の頬は緊張してしまい、まるで泣いているような顔に見えるらしく、何度も何度も撮り直しとなりました。
だんだん雰囲気が重たくなり、本当に泣きたくなってしまった頃。突如としてカメラを構えていた初老のご店主が目の前で手品を見せてくれたのです。手品といっても、大したものではなく、ステッキから花が出てくるといったものでしたが、私はその鮮やかさにパッと笑顔になりました。
「そうそう。その顔、その顔」
私は、緊張が解けて笑顔になりました。そうして、やっと写真を撮ることができました。
あの時のご店主の機転には、本当に助かりました。